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2017年9月7日木曜日

Vol,88 氷河登高のテクニック



ご無沙汰しています谷です。さて今回は僕がブログ担当です。
カナダの山でよく色々話になる氷河。
クレバスは怖そうだし難しそう。これ一体全体なんなのって話ですよね。
なので今回は氷河について少し話して見たいと思います。

まず最初に氷河とはなんだというと氷です。そしてそれが重力とともに下方に動いている
ものを指します。でっかい動く氷の塊。
カナダのコロンビア大氷原は名古屋市と同じ面積で深さ300mくらいあります。
これ全部なくなったら、新しいクライミングルートが谷底からできるかもしれませんね。
つまりそれが日本でいう涸沢のような地形に当たるわけです。

ちなみに氷河の元は雪です。その長年の積雪が圧縮され氷になっていきます。
近年氷河がなくなっている、後退しているという話がのぼりますが、氷河は今も作り出させています。ただできる量より溶ける量が多いのでなくなって行っているように見えるだけなんですね。

さて氷河のウンチクはめちゃめちゃ奥が深いのでこの辺りで終わりにします。
それは学者さんや本で調べてください。
何がセラック(懸垂氷河)で何がベルクシュルンドで、何がクレバスか、それはいくらでも載ってます。
今日の話のはいかに安全に氷河を登って降りるということだけにフォーカスします。

さて氷河と聞いてまず思い浮かべるのがクレバス。
ほとんどの人がクレバスと聞いてレスキューテクニックをイメージしますが、一番最初は落ちない、落ちた時のダメージを最小限にする。これが鉄則です。
はっきり言って、落ちた人がアイスクライミングして登ってこれる事がほとんどのなので(統計として)。なので今日は防ぐ話を最初にしますね。

ではまず質問です。この二枚の写真、比べてクレバスに落ちること考えるとどっちが危ないですか?
1枚目
2枚目

正解は2枚目です。2枚目の方がクレバスに落ちる危険性大です。

え?って方、今から解説しますね。
1枚目。見えている氷の氷河は滑落の危険はありますが、どこにクレバスがあるのか目視できます。
つまり岩場と一緒です。急なところではロープを必要としますが、見えているクレバスにわざと落ちる人は基本いません。
ですが2枚目はロープに僕入れて4人繋がっているのですが、表面が雪なのでどこにクレバスがあるかわからないんですね。
こういう時、スノーブリッジがどれだけの強度があるか上からではわからないものなので
ロープをつけます。
なので先頭の方が一番落ちる可能性が強く、プローブ(雪崩捜索時に使う棒)を使って
どれだけの硬さのある雪か、あとその下にクレバスが無いか調べながら登ります。スカって棒が入ったらあなたはクレバスの上にいるわけですね。仲間にロープを張ってもらってゆっくり後ずさりしましょう。
1枚目の写真のクレバスの奥がスノーブリッジになっているのわかりますか?
雪田のようになっている箇所。
そこをロープなしでわたって暑い日中だったらかなり危険ですよね。

ただ一枚目が安全と言っているのではなく、1枚目の一番危険なハザードは氷の上を登ることによる滑落であり、そのためにロープを短めにしてより良いビレイを必要とします。

2枚目は平坦ですごく簡単そうです、滑落の危険はまず無い。ただクレバスがどこにあるかわからない。一枚目のようなクレバスが雪の下に隠れているかもしれない。
夏の積雪の減少、陽が当たることによっての積雪の軟化でスノーブリッジが弱くなり、クレバスに突然落ちてしまう可能性があるわけです。

メインのハザードが違うということですね。
仲間が3人だった時の話ですが、2枚目は最低でも10m以上のロープの長さが一人一人の間に必要です。なぜなら隠れているクレバスが5mだった場合、短いロープだと二人ともスノーブリッジの上にいることになるからです。
アラスカや南極など大きな氷河がある地域は10m越えのクレバスがありますが、北米、ヨーロッパではロープは10mあれば基本ことが足ります。クレバスが大きく無いので。

1枚目をまた見てください。ロープは滑落を止めるため短ければ短いほうがいいでしょう。
つまりビレイを必要とするロープの長さとクレバスフォールを防ぐロープの長さは大きく異なるテクニックだと考えてください。

では次の写真へ。
これは氷河にエントリーするための地形です。
この場所のメインハザードはなんなのか考えて見てください。
ちなみに4枚目はその氷河の上の斜面の状態です。
3枚目

4枚目


これのメインハザードはもちろん落石です。

氷河に落石?って思う方日本人は多いかもしれないですが、
これは本当に危険なことですので今一度しっかり勉強しましょう。

氷河は毎年動いていて岩を削り運んでいるので、氷河付近には安定した登山道は整備できません。つまりガラガラのモレーン。落石工場が存在します。
3枚目の写真右上を見てわかるように氷河の末端はほとんどが落石の危険を含んでいます。
(たまに平な氷河エントリーあるけどねワプタとか)
なのでなるべく落石のフォールラインを避け、クイックで登りましょう。
ここでクレバスのためにロープを10mとかさばいて時間をかけるより、
短くロープ出して登りましょう。ハーネスへの連結もカラビナで十分です、まず落石という危険にさらされている時間を短くしましょう。
そしてだいたい氷河末端は急なので滑落しないように安全に登り、平な氷河まで上がります。よくそこまでにクレバスあったらどうするのと聞かれますが、
まずは落石の危険にさらされてる時間を極力短くしたいこと、
そして急な氷河からの滑落を防ぐことが第一なので、
今の状態で一番危険なハザードを回避する方法を使います。
特に降りですね〜。マジで危険っす。落ちたら氷なんで骨折確実です。
更に言うと末端の氷河は厚みが少なく、大きなクレバスが少ない傾向にあるためです。

そして平らになったらロープを10m以上伸ばしてクレバスを避けるように登っていきましょう。
ここからメインハザードが落石と滑落からクレバスフォールに変わったわけですね。
だからテクニックも変わりました。
また4枚目の写真を見ればわかるように氷河の斜面には結構でかい石が転がっていて
これが落石になることが多々あります。なので通過する時間もすごく重要ですね。朝早く、陽が当たらず寒いに越したことないです。

そうすれば、はい、あなたもこの画像の中に現実に入ることができます。
クレバスレスキューなど基本が知りたい場合は、コースを受けるか、僕をご用命ください(笑)
一番重要なのはクレバスレスキューなどの小手先のテクニックではなく、山全体を見渡し、今一番何が自分たちにとって脅威であり、危険をどう回避するかが重要だと考えます。遭難救助より遭難防止の方がより難しく尊いと言う山小屋時代の先輩のことがしみてくる今日この頃です。
そしてその防止する部分こそ回避するテクニックが登山の中で一番面白い部分かもしれませんね。

もちろん時間がない方は、アルパインガイドである僕に頼んでいただければ、全部しなくていいんで(笑)
まだまだある氷河のテクニックですが、一回では無理ですね。
今回は基本中の基本、さわりだけにしておきます。

では今後氷河のあるデカイ山に行く皆さん。行きたい君達。
少しでも参考にしていただければと思います。
そして下の画像にあるような山でお会いしましょう!!
そして一緒に登りましょう!!では山で。


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