チーム「Link∞UP」は日本と北米の‘愉快で有益な’「マウンテンライフ」情報を日本と英語圏において共有をすること。 その生活を‘一生懸命楽しんでいる人達’のコネクション強化を図ることを目的に活動しています。 日本や北米でのマウンテンライフについて情報の欲しい方や私達に興味のある方はお気軽にご連絡下さい。

2017年10月31日火曜日

Vol96. 雪崩危険度判断の指標

少しの違いで雪崩は置きます
大切なのは”なんで?”と思うこと
 Vol96は秋山が担当します。
日本で3週間ほど過ごしてカナダに帰ってきて早速スキー場でのパトロール業務を再開していますが、結構雪も積もっており、今年もスキーシーズンが楽しみです。

さて、我々スキーヤー、スノーボーダーの最大の楽しみの一つは何でしょう?
それはもちろん、バッフバフの新雪をスプレーを顔に浴びながら滑ることです!!
これ本当に病みつきになります。

下の動画は、2016年1月に旭岳行った時のもの。この日も視界はゼロでしたが深かったです。こんなのを毎日滑れたらそりゃー幸せな人生でしょう。



ただ、この新雪を滑るのに技術や体力、装備がいるのはもちろんのこと、皆が一番気にかけるのは何でしょう。そう”雪崩”です。
どんな急斜面でも、新雪でも雪崩れることがないんであれば、本当に楽しいだけですが、残念ながら人生そんなに甘くない。雪崩れます。そして雪崩れた結果で一番重いものというと、あなたの命、です。

いくら楽しいことでも命を賭ける程ではありませんね。

ということで、滑りたい斜面が目の前にあった、じゃーここを滑りますか?という時にどのように判断すべきなのでしょうか?

答えは簡単。
リスクが少ない場合に滑ればいいのです!
なるほど、なるほどリスクね、リスク。。。リスクって何さ!

カナダの雪崩教育は世界一です。そのカナダで考えられ、我々が意思決定に使う概念モデル”Conceptual Model”と言うものがあるので、今日はそのコンセプチュアルモデルを元にリスクについてを考えていきましょう。

雪崩地形における意思決定は、カナダではLevel2というコースで1ヶ月ぐらいかけてならい、その後現場で磨いていくものですので、このBlogで全てを説明するのは不可能です。ただ、雪崩地形を滑るのはこんなに複雑だよ、っていうのを感じて頂ければ幸いです。
 Avalanche hazard +Vulnerability & Exposure=Avalanche Risk
(雪崩の危険)+(傷つきやすさ)&(露出)=(雪崩危険度)
まずは文言の整理をしましょう。
Hazard(危険)とRisk(危険)という言葉がでてきますが、辞書的には一緒(両方共、危険)ですよね。
でも実は細かく違くて

Avalanche Hazard - a potential source of harm、ポテンシャルソースには頻度、規模が含まれます、つまり大きな雪崩が起きる可能背が高い場合はHazardが高くなります。

Avalanche Risk – the combination of the likelihood of the occurrence of a harm and the severity of that harm、先程のHazardにSeverityを追加されています。
ということで、Riskはハザード+そのハザードに対して自分がどれだけ耐えれるか(生身と車の中の違いなど)とその地形からどれだけ離れているか(ハザードが高くても遠くにいれば安全)を加味してリスクが決まるわけです。

既にややこしくて半分以上の読者がページをそっと閉じたと思いますが、要は、Hazardが高くても、家にいればRiskが少ないということです。逆にHazardが低くても、裸で崖の上を歩いてればRiskは高いということです。

雪崩のリスク理解できましたね。
リスクは、ハザード+傷つきやすさと危険への露出度。
なるほどハザードね。ハザード。。。ハザードって何さ!

ハザードについては、一般の方は、カナダであればAvalanche Canadaが出す雪崩予報、日本であれば日本雪崩ネットワークが出す予報を使用するのが手っ取り早いです。ガイドをお願いしてる場合は、ガイドさんが独自にこれを判断している(筈)ですので、聞いてみましょう。

自分でハザードを割り出したいというマニアックな方は、下記を参考にして下さい。
自然の状況
1. 最近の雪崩(種類、大きさ、原因、数、分布等)
2. 雪の状況(分布、弱層、接合面、スラブの厚み、重み、雪温、使用頻度、伝播)
3. 天気(現在、過去、未来、降雪、風、気温、直射日光、湿度)
4. 地形(斜度、方位、形、植生、地面の種類、地形の大きさ、高度、地形の罠、氷河)
よく見る、雪を掘ってシャベルでトントンするやつは、この中の弱層の部分を見ているだけなので、ほーんの1要素でしか無いわけですので、トントンしたのでLet's Goは少し焦り過ぎなのがわかりますよね?
反応度
雪面がどの程度簡単に反応するかを知りましょう。
自然に雪崩れるのか、人が誘発するのか。爆弾ぐらいのショックでないと誘発しないのか、など。

分布
上記の雪の状況がどの程度の広さだ分布しているのか?
この谷だけ、この山全体、この山脈全体、北斜面だけ、北と東、などなどです。
頻度&大きさ
上記の情報を掴んだ上で、その斜面の上に乗っている雪がどの程度の頻度で、更にどの程度の大きさで起こるかを予想します。小さい雪崩しか起きないとわかっているのと、絶対助からない大きな雪崩とでは、対処が全然違いますよね?
自信
更に大切なのは、その予想にどの程度の自信があるのかも鑑みます。情報が少なくて自信がないのはもちろんアリです。自信がないことを知っていることが重要です。一番怖いのは根拠のない自信ですね。

上記の情報を元にハザードを割り出すわけです。ふーめんどくせー。
そして最後は前述の頻度(自分のいる場所で起きるのか否か)と起きた場合の自分の傷つきやすさを総合判断して、Riskを割り出すわけです

私はスキーガイドが職業ですが、例えばお客さんと滑る際に、このRiskと更にグループのアビリティを加味して、滑るか滑らないかを決定していきます。

グループのアビリティ
1. リスク許容度(個人山行とガイディングでは大きく異る)
2. 滑走技術(その斜面にいる時間が長いとリスクも増える)
3. 現在時刻(夕暮れが近いかなど)
4. 1日の行程、皆の疲れ具合

最終的なポイントは、雪崩れるか雪崩れないかではなくて雪崩れた結果(RISK)がどうなのか?というところです。例えば、絶対雪崩れるけど小さいのしか起きなくて、流された場所が平たいところであれば問題ないですよね? 逆に小さい雪崩でもその先が500mの崖であれば問題大ありです。

また、お客さんが雪崩を見たことのないニューカレドニアから来た人とクレイジー民族フランス人とではリスク許容度も違うので、ガイディングも変わってくるわけです。夕焼けが迫っている最後の1本と朝イチの1本でも選択は変わりますしね。

ということで、長々小難しい話をしましたが、ここで机上で理解したと言っても、所々の言葉を全てひっくり返す判断をするのが人間。つまりヒューマンファクターが最後に入るので、あー難しい。
ヒューマンファクターについては私の個人のブログに大作がありますので、そちらをどうぞ。雪崩におけるヒューマンファクターについて

ただ、声を大きくして言いたいのは、Riskを判断しないで山に入っている(何も考えていない)のは経験でもなんでもないですし、ヒューマンファクターでもなんでもないです。ただの盲目。雪山は危ないので、ちゃーんと勉強しましょう。その手間を簡単に省きたい方は、 ”ガイドを雇う”ことです。ただそのガイドさんも上記の思考プロセスを踏んでいる必要はあるわけです。ここで20年滑っているから地形を知っている、雪崩れたのを見たことが無い、というのは経験/知識とは言えないわけです。

さー今年の冬も安全に楽しみましょう!

2017年10月24日火曜日

Vol.95  秋の剱岳 チンネ左稜線

こんにちは。星野です。
北海道は各地で初雪が降り、いよいよ冬が近づいて来ました。そろそろスタッドレスタイヤに交換する時期です。タイヤ交換をすると、自分の中でようやく季節のスイッチが切り替わる気がします。そろそろ夏のクライミングは終わりですね。今年はどんな冬になるのでしょうか?楽しみです!

今回はリンクアップメンバーの剣村君の地元、富山県の剱岳。飛騨山脈の北部、立山連峰にある標高2,999mの山で、山岳信仰の対象として有名な山ですが、日本では数少ない氷河が現存する山でもあります。さらに麓の立山駅には国立の登山研修所もあり、日本のアルピニズムの中心地でもあります。

僕は毎年秋に、本州のバリエーションルートを1つ登りに行きたいと思っていて、今年は剱岳のチンネ左稜線に行ってきました。パートナーはリンクアップ名誉顧問のK玉さんと、その友達のK村さん。群馬のKKコンビです!チンネとはドイツ語で「切り立った尖塔状の岩峰」。その名の通り、シュッと尖った岩峰が美しい良いルートでした!

 
1日目はアプローチ。室堂から出発し、別山乗越を越え、剱沢へと下っていきます。9月でも大量に残る雪渓、氷河がある意味が解る気がします。


最後に長次郎谷を登って行けば、この辺を登るためのベース地になる熊の岩です。立山では「谷」を「タニ」と読まずに「タン」と読むそうです。なのでこの谷は「チョウジロウタン」と読みます。「谷君」も、立山に来ると「タン君」になる訳です!

そしてここが、熊の岩のテン場。雪渓と岩に囲まれて、何だかBugabooのApplebeeを思い出しました!日本にも良い場所が沢山あるなぁ~って思いました。

2日目。早朝からヘッドランプでスタート。少し歩くと谷に日が差し込んできました。

今日の先行パーティーは北大の山岳部の3人組!話していると、北海道でも会った事があり、何だかテンション上がりますね!各地からみんなが登りに来るって事は、それだけ良いルートって事です。クライマーの狭い世界、僕は好きです。







ルートは高度感といい、露出感といい、とても素晴らしく、このルート3回目のK玉さんも満足そうな顔!天気も良かったですからね!



本当に最後まで天気も良く、最高の秋のクライミングを満喫出来ました~!

時間もあったので、ちょっと足を延ばして剱岳の頂上へ。やっぱりゴールは頂上でしょ!

入山前には、剣村君宅にもお邪魔させてもらって、元気で頑張ってる話も聞けました。最近、狩猟の免許を取得したらしく、近い未来、剣村君の狩猟の記事を読むことが出来るかもしれませんね!?

今回の1枚です。
熊の岩でApplebeeを思い出したので、Applebeeにします。ここは氷河と岩に囲まれた最高のテン場です。ベストシーズンは7月、8月。世界中からクライマーが集まるテン場ですよ!

2017年10月20日金曜日

Vol 94.カナディアンロッキー登頂 その8 Mtバルディ


おひさしぶりです。谷です。
ロッキー登頂、第8弾はMtバルディをご案内。
もう8個目ですね〜
これ全部読んでいればピーク8個登れるわけですからなかなかいいでしょう。
ロッキーはもう冬でアイス、スキーにみんな盛り上がってますが、今回の山は初秋や残雪の春も登れる山なので、来年に向けてロッキーに来たいなと思っている方、いいかもしれません。

標高2192mのこのピークは所要時間約6時間で登って帰ってこれる山で特に危険な箇所もなく注意すべき点は落石と数カ所の岩場のみです。キャンモアから車で約30分ということもありアクセスもいいです。ロッキーの中では初級のピークになりますが、登頂なので眺めや達成感は他のハイキングとは一味違った楽しみを提供してくれます。

カナナスキスの最初の湖バリアレイクのすぐ南に鎮座するMtバルディ。
赤線はルートで東稜を今回登ります。ちなみにもう一つ南側の尾根から馬蹄形で縦走すると
1ランク上のバリエーションルートが楽しめます。


岩場の通過はそこまで難しいものではないですが慎重に。
でもこれがまた楽しい。



最後の登り。
ちょっと岩場って感じです。



頂上稜線に上がると眼下にバリアレイク。


頂上からの動画。カルガリー大平原がでかい!!
岩場や氷河があるハードな登頂もいいですが、足慣らしを兼ねてこういうピークに登ることで、ロッキー特有の地形や天候も理解できるし、まず山頂に立つことは楽しいのでオススメです。
がっつり登る人はレスト日や足慣らし。
ハイキングからステッフアップしたい人は来年の登るリストに入れて見てください。
では


2017年10月13日金曜日

Vol.93 子連れ登山 ~1歳半・ベビーキャリア編~

紅葉する笠ヶ岳と朝日岳

赤子がいる、しかし山には行きたい。土日両方ともとは言わない。いや、嫁の許可が下りそうな気配が少しでもあるなら、すかさず両日とも山に捧げたいと申し出るだろう。気持ちはある。気持ちはあるが、勇気はない。子育てを手伝ってくれる親族は周りにいない。子育てを共有あるいは分散できるママ友やママ衆はほとんどいなく、ベビーシッターを雇う金銭的な余裕はまあ無い。そんな状況でいかにして山に行くかということについて考えた時、いくつかの選択肢があると思う。

  1. 妻子を連れて行く
  2. 赤子のみを連れて行く
  3. ダメージを最小限に抑えた上で、妻子を置いていく
  4. 無策のまま妻子を置いて家を出る

本稿のテーマはあくまで1.と2.であり、その具体的な方法についてだが、念のためそれ以外にも簡単に触れておく。

左からマチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢


4.は俗に言う「フリーソロ」と呼ばれるやり方で、クライミング中は中間支点もビレイ点も無く、当然ロープも無い。あるのはチョークバックとクライミングシューズ、そして己の肉体のみ。1つのミスが死に直結するクライミングの中でも最も危険なスタイルである。言い換えると、留守中は妻子と共ににいてくれる友人も義祖母もおらず、当然ベビーシッターもいない。あるのは帰宅した時に誰もいないのではないかという一抹の不安と罪悪感、そして世間からの非難のみ。1つのミスが家庭の崩壊に直結する生き方の中で最もボールドなスタイルである。これを選択することは理論上は可能。昨シーズン、厳冬期のピーカン時には何度か敢行したが、できれば避けたいハイリスクハイリターンな方法である。

行きたい時はどうしても行きたい


次に3.だが、私は主にこれを採用してクライミングや山スキーに出かけてきた。といっても、嫁方の家族の有難いご理解とご協力を賜り、他力本願でなんとか束の間を自由を与えられたに過ぎず、自分で機会を作れたことはほとんど無い。いや、一度も無い。手段は家族ぐるみ(私は関与しない)で遊んでもらう、一時的に実家に帰ってもらう、実家から誰かに遊びに来てもらう。妻の気分転換にもなり、上手く行けばダメージはゼロ。しかし、ヒューマンスキルの欠如により、自らきっかけを作ることができないため、どうしても機会は散発的になる。ならばベビーシッターはどうか。正直金銭面で諦めていたが、最近は時給千円〜であるらしい。どうしても山に行きたい冬は要検討かも知れない。

戸倉城山は里に近く、眺望もある手ごろな山


1.と2.は子供を連れて行くという意味で共通しているが、パートナーが山歩きをリクリエーションとして楽しめるかどうかによって意味合いと効果が微妙に変わってくる。基本的には奥様次第。山歩きを求めているなら一緒に行く、家で一人穏やかに過ごす時間を必要としているなら嫁を置いて息子と出かける方が良い。当家はどちらかというと後者なのだが、子離れができていなかったのか、それとも私が信用されてなかったのか、つい最近まで子供と二人だけで山に出かけることはできなかった。

子供は現在一歳半で歩行も少し安定し、ちょっと躓いてもリカバリーできるようにはなってきた。が、もちろん山歩きをさせるにはまだまだ心もとないため、担ぐ必要がある。大したノウハウも無いのだが、以下に気づき事項をまとめてみた。

大岳山に続く縦走路


目的

率直に申し上げて私の気分転換であり体力維持である。完全燃焼はできないが、二日間も家で腐っているよりは大分マシだ。副次的な目的としては、子供の教育である。

歩けないとはいえ、自然の中で過ごす体験は幼児に少なからず良い影響がある。そういう研究結果も複数件報告されているだろう。なんの権威付けもしないが、ほぼ間違いなさそうだ。そう確信めいたものを感じている。

それは私が近くのジムにポケモンを配置しに出かける時、顕著に現れる。子供は玄関で「僕も連れてってくれ」と両手を宙に差し出して泣くのである。気持ちは痛いほどわかる。こんな金太郎飴のように没個性的で周囲に自然も無い家に二日間もいては息が詰まるのである。最近になって強く感じるのは、子供が父母それぞれに異なるものを求めていることだ。母親には安らぎを、父親には刺激を求めているような気がするのだ。

白毛門の鎖場。ベビーキャリーでは避けるのが無難?


行き先

目的地としての第一条件は、子供の体調や気分が急変した時、すぐになんとかできる環境があることだろう。具体的には、里に近く、エスケープルートが取りやすく、できれば近くにロープウェイ等歩き以外の手段があることだ。転滑落のリスクが高くなるテクニカルなルートはできれば避けたい。落石、落雷、増水、鉄砲水等々外的なリスクもできるだけ排除したい。距離が長すぎて時間がかかると子供が泣き出したり、脱糞したりする可能性があるので、山行時間も抑制する必要がある。

そうすると、起伏が無い森林限界以下の低山がメインで、周囲が急な斜面に囲まれるおそれのある沢地形以外ということになるだろうか。そうすると、自然と初心者向けの山になってしまい、紅葉の行楽シーズンはどうしても人が多くなってしまう。自然に触れたくて山に入っているのに、人に囲まれてしまっては元も子もない。ここが行き先選定の核心である。

西沢渓谷は涼しくて夏でも快適だが、濡れていると滑りやすい


そんな観点でここ一年で以下のような山歩きをしてきた。

山名
山域
時期
年齢
山行時間(hr)
歩行距離(km)
登り標高差(m)
1. 三頭山
奥多摩
11月
7ヵ月
4.0
5.32
573
2. 石割山
富士・御坂
12月
8ヶ月
2.5
4.47
337
3. 日和田山
奥武蔵
12月
8ヶ月
3.0
7.19
441
4. 戸倉城山
奥多摩
2月
10ヶ月
3.0
3.89
331
5. 子ノ権現
奥武蔵
6月
1歳2ヶ月
5.0
11.33
571
6. 西沢渓谷
奥秩父
7月
1歳4ヶ月
3.5
10.96
991
7. 大岳山
奥多摩
10月
1歳6ヶ月
5.0
13.69
1,105
8. 白毛門
谷川
10月
1歳6ヶ月
6.0
6.05
992


控えめに言って1.~5.までは悪くない選択だったと思うが、次第に距離と標高差が高くなっているのが気にかかる。去る日曜日に行った白毛門は鎖場等があり、思っていたよりも山っぽく、ベビーキャリーでの登山には適さなかった。自分の体力的な満足度と妻子の状態を上手くバランスさせられる目的地を選ぶのは結構難しい。少なくとも自分が行きたい山とはかなり変わってくるので、別なモチベーションと調査が必要になる。


注意点

子供の年齢や性格によってかなり異なるため一概には言えないのだが、私は特に体温に気を配る必要性を感じた。背負って歩いている当人は温かく、動き続けている限りその背中も発熱しているのだが、ふと気がつくと子供の手先、足先が冷たくなっていることがあった。手袋や靴下、レッグウォーマー等で末端をカバーすると共に、定期的な確認が必要だ。あと、歩き出してしばらくすると振動のせいか寝入ってしまうことが多い。寝ると子供の体勢が崩れ、背負っているザックの重心が変わったり、顔が少し飛び出したりするので、歩き方や周囲の障害物(特に枝)に気を付ける必要がある。最も避けなければならないのは転滑落で、子供の将来(特に年末年始にこたつでみかんを食べる自由と権利)を奪ってはならない。

なんでも食べてくれるようになると楽になる

補給については、自身の補給と子供の補給の両方を考える必要があるため、少し複雑だ。子供が寝ているとザックが下せず自分が水分補給できないため、ハイドレーションが好ましい。子供の飲食はぐずり出したタイミングや定期的な休憩時に行う範囲で今のところ大きな問題は無い。あと、有難いことに今のところ山中での排便は無い。

ギア

以下に最低限必要なものを列挙してみた。他にもある気がするので、気が付いたら加筆修正していきたい。

  • ベビーキャリー:Macpac POSSUM。貰い物
  • ツェルト:二人用
  • 飲み物:ゼリー状のもの、お茶、ジュース等いくつか用意
  • 食べ物:電子レンジで温める必要のないもの
  • おやつ:2種類程度をその時の気分に合わせて提供
  • 替えのオムツ:山ではパンツ型の方が履かせやすい
  • ティッシュ:多い方が良い
  • ジップロック:汚物やゴミの回収用にいくつか
  • レジャーシート:厚めのクッション性がある方がベター
  • 上着:防風性、保温性のあるもの
  • 靴:開けた場所で歩かせられるように
  • レッグウォーマー:背負った時にできるズボンと靴下の隙間を埋めるため
  • 日よけ帽
  • 手袋


以上、イクメン見習いのカネイワでした。

2017年10月3日火曜日

Vol.92 レクリエーションからプロフェッショナルへ

黄葉のヤㇺナスカ 今年何回登ったんだろう。。。
 皆様ご無沙汰しております。つい先日、今季のハイキングガイドの仕事が無事に終わった山田トシが担当します。先月、めでたくACMG(カナダ山岳協会)アプレンティス(見習い)ロックガイド試験に合格したので、ガイドというものについて書いてみたいと思います。http://www.acmg.ca/
ACMGのアプレンティスロック試験は年一回スコーミッシュとロッキーの二か所で行われています。フリー要素の強いスコーミッシュ会場とは違いロッキーはもう少しアルパインチックな会場と言えます。表紙はお馴染みのヤムナスカ山です。ガイドのスキルを確認するのにここほど最適な山は他にはないので、毎年試験会場の一つになります。私はというと、試験日5日間のうち3日間ここで登りました。南面なので日当たり良好で30°の炎天下の中登っていました。
カナダではレクリエーションクライマーとプロクライマーという分け方をします。レクリエーションは趣味で登っている人達。プロはお金をもらって登っている人達です。ガイドもそうですが、コンペに出ているアスリートもそうですね。カナダのトップクライマーのソニートロッター、ウィル・スタンホープ、ウィルガッドなどもみんなACMGのガイド資格を持っているんですよ。ロッキーやバカブーなどのエリアは国や州によって規則が定められていて、ガイドの権利と尊敬が守られている証拠でもあります。


トレーニング風景その1
with ボブ

トレーニング風景その2
with ボブ
 昨年の悔しさをバネに今年の夏は仕事も休んでトレーニングに励みました。昨年のスケジュールを見返してみると、仕事ばかりで5日もトレーニングできていませんでした。今年は20日以上トレーニングをして本番に臨みました。ガイディングをする上で、下準備はもっとも大事な作業の一つです。ルートの下見は勿論、それができなくてもできる限りのルートの情報を集めて、1日の流れをしっかりとイメージすることで、その日の危険個所、注意点が見えてきます。

トレーニング風景その3。エイド技術も必要。

トレーニング風景その4。ガイドテクニック。
ガイドならではの技術を使い、危険個所をいかに安全にガイドできるかを考えて行動することが求められます。スピードを取るのか、安全を取るのか。場面場面で最も正しい行動を取らなくてはいけません。この部分はまだまだ経験が必要だなと感じました。
トレーニング風景その5。クライアントケア。


 お客さんとのコミュニケーションは安全を確保する上でとても重要な要素です。ルートの途中でこんな空中懸垂をさせる前には、事前にこれから起こることについて説明があると、お客さんとしては安心ですよね。安全はガイドテクニックによって確保されていますが、プロとしてはプラスアルファが求められます。
実際の試験4日目の風景。オンサイトガイディング中。
 ACMGのガイド試験はハイキングでもロックでもオンサイトガイディングに、とても重きを置いています。どんな場所、オンサイトの場所でもいいガイディングができてこそ、プロという証なのでしょう。過去の試験ルートはほとんど下見に行ったにも関わらず、試験の半分はオンサイトガイディングでした。なんで試験官は俺がそこへ行っていないことを知っているのか不思議です。
この日は4人2パーティーでの試験でした。
 自分が試験官をガイド中、ずっと自分の行動を見られて評価されています。今まで山で何気なくやっていた行為を、本当にここはこの行動で正しいのか?と常に考えながら行動しなくてはプロとしては失格ということですね。それによって安全係数も限りなく100%に近づけることができます。
トレーニング付き合ってくれたみんなに感謝。
トップアウトしてお客さんがこんな表情をしてくれた嬉しいだろな。
昨年の失敗と今年の成功を比較して思うことは、今年はレクリエーションからプロフェッショナルへとマインドをチェンジして試験に臨めたということに尽きます。後輩を山へ連れていくのとお客さんを連れていくのでは、やっている行為は似通っているとしても、その中身の質と意識は格段に差があるということですね。今回は驚く位、マインドをチェンジできていたので、他の試験者の行動も冷静に分析できていました。
まだロックガイドとして入口に立ったに過ぎません。本当のプロフェッショナルになるために来年から少しずつ経験を積んでいけたらと思います。
でも自分が今までずっと持ってきた自身の山登りや、クライミングへの情熱はずっと持ち続けたい。プロフェッショナルとレクリエーションとをうまく両立させて、このロッキーの地で、自分もお客さんもハッピーな山ライフを送ることが一番の目標です。



2017年10月1日日曜日

Vol 80 A Life as an ACMG Alpine Guide in Canada and my view towards a Guide as a career






This story is written by Takeshi Tani.


Backcountry Skiing in Youteizann
There are multiple job titles in mountain industry named as a Guide. In this blog, I am going to specifically talk about a job as an Alpine Guide in Canada. These are for you who are interested in getting a job in this field or purely curious about what is like to work as an Alpine Guide.

If you have already known what an ACMG (Association of Canadian Mountain Guides)  Guide is, probably this story would just repeat what you have already known. When the majority of people hear that I make a living by working as an Alpine Guide, most likely, their response would be the same both in Japan and North America.

From their response, I can tell that they think, " Oh, that must be a seasonal job...can't afford to live by that..."

Well, to a certain extent, that's true. I used to work as a custodian at a few huts and it was a seasonal job. Karasawa in summer and Hakuba or Niseko in winter. This is a typical lifestyle in order to make a living by working in a mountain industry in Japan. Also, I used to practice mountain rescue and just to be qualified to be a member, I was required to rent a place in that area so I can be considered to be local.  I remember renting an apartment knowing that I would only live there for a month in a whole year.
However, some people would think I could stay in one mountain area and settle down there. 

The difficult part of that idea is that in order to seek for the best for your career, you need to move from one place to the other as nature changes each season and the same location won't be the best option all year around. 

In Canada, the same thing can be said as well. In the areas that boast great quality and quantity of powder snow in winter, you may encounter limitations of job market during summer. Like many outdoor enthusiasts' dreams, spending summer in Squamish then moving to Revelstoke or Nelson in winter sounds like a dream life but splitting life into two parts while working, and continue to do the same things many years to come would become a depressing idea eventually. Also developing a sense of community and contributing something to the area where you live would be almost impossible.


Of course, there are some places that are exceptions. Chamonix-Mont-Blanc in France and Zermatt in Switzerland. These places attract people all year around. Those places are actually extremely rare case even when we see at the world level. This reality makes most of the Guides to work as a Ski Guide during winter.

Teaching an ice climbing is another way to be a Guide in winter 


Now, get back to the main topic of being an Alpine Guide. Actually, you can work in Banff and Canmore area for a whole year! This is actually the best place for you to keep working as a Guide in winter without becoming a Ski Guide. As long as you become an Alpine Guide, you can take clients to a mountain as an Ice Climbing Guide. Combination of lower temperature and small precipitation of Banff area might not be an ideal spot for powder snow and Backcountry skiing but on the flip side, it creates perfect conditions for ice climbing.  As a matter of fact, other than Glacier Skiing in spring,  most of the ACMG Ski Guide wouldn't work in Banff area.  One of the best ice climbing areas in the world, Banff national park. If you become an Alpine Guide here, you can take clients to the Rockies, glacier hiking, and Bugaboo. This allows you to settle down in the area and work all year around. Also, good side of this story is that since you are working all year round you can receive pension and all those insurance stuff(  Adulting...Haha) which I believe this isn't strong suit for most of the Mountaineers (but in reality, it's very important to keep on climbing and going for trips). This allows you to do what you love to do and at the same time one less thing to worry about.



A gorgeous day and you can call this as your workplace  (Above) Bugaboo BC Canada

Multi-pitch climbing at Mt. Yamnuska
Mt.Assiniboine



Enjoying  ice climbing under a breathtaking view of Aurora 

Now I hope this story changed your perspectives toward an Alpine Guide in Canada. Nevertheless, I am planning to take a Ski Guide exam this winter. It's mainly because of my curiosity and my hobby. However, this is very competitive.They take 20x of applications for candidates quota. This makes just passing the initial documents screening process quite hard. It's very common to hear that people take 3-5 years just to pass the initial screening. In Canada, you can do a variety of skiing. Heli-Ski and Cat Ski to name a few, so the popularity is totally understandable.



Extra info: Some people would ask where would be a good place to work as a Guide in Japan. Personally, I recommend Kamikouchi area(Nagano) which attracts skiers, ice climbers, and alpine climbers. It's not the greatest climbing area in summer but at least they have a great climbing gym.
 Asahikawa area (Hokkaido) has also its charms. Fewer people. You can climb in Seigankyo, ice climbing in Souunkyou, mix-climbing in Kamui-Iwa and Back Country Skiing in Furano area. These areas don't have higher mountains but they do have a great selection of activities.Now I hope you understand the perks of living in Banff area as an Alpine Guide and how the area allows us to work all year around.


I strongly believe a place can form people and their lifestyle, so when you think about your future, try to think about your ideal place, job, and lifestyle.  This might help you find the best place that works for you the most!
                
                                                                                                                                                                    Translated by Yumiko Mori